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Soul Eyes

黒顔羊のデジタルフォトギャラリー#2です。光蜥蜴(ヒカリトカゲ=光と影)や錆びたもの・滅びゆくものが大好きです。 自分の魂の目に感光したものは何でも撮ります。


by Black Face Sheep

ゲルハルト・リヒター展 - 豊田市美術館

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豊田市美術館で、ゲルハルト・リヒター展が始まりました・・・初日の10月15日午前10時、開館と同時に入館しました。
ゲルハルト・リヒターは、ドイツが生んだ現代アートの巨匠で、東ドイツのドレスデンに生まれ、その後西ドイツに移住しました。

1960年代に本格的に活動を開始して以来、世界のアートシーンの最前線を走り続けてきたリヒターの大規模個展、見ごたえがありました。
リヒター自ら愛蔵してきた作品群を中心に、60年にわたる画業の集大成とも言うべき展覧会でした。



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左はリヒターの《グレイペインティング》の一つです。
1960年代後半に始まった、グレイの色彩で画面を覆うシリーズです。
リヒターはグレイの色彩を“なんの感情も、連想も生み出さない” “「無」を明示するに最適な” 色と表現しています。



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壁面にディスプレイされているのが正方形のカラーチップを組み合わせた《カラーチャート》。
1966年に初めて制作された「カラーチャート」シリーズに連なる作品で、当初は、絵具の見本帖をもとに描かれていたんだとか。

その手前に置かれているのが、《8枚のガラス》。
鑑賞している人々をフレーミングして1/8秒のスローシャッターで撮ってみたら面白い効果が出ました。



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リヒターのフォト・ペインティングの代表作の一つ《モーターボート》です。
1965年に製作された作品で、キャンバスに油彩で描かれています。

写真を忠実に描くことで、絵画を制作する上での約束事や主観性を回避し、代わりに写真の客観性を獲得するものなんだとか。
刷毛で表面を擦ることで生じた「ぼけ」は、絵画と写真とのあいだで客観性とは何かを考えさせます。



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こちらもフォトペインティング《8人の女性見習看護師》です。
こちらは写真ヴァージョンとのことなので、油彩バージョンも存在するのでしょうか。



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右は1983年に描かれた油彩《頭蓋骨》です。



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幅2メートル、高さ2.6メートルの作品4点で構成される巨大な抽象画《ビルケナウ》です。
ホロコーストを主題としたもので、リヒターにとって重要な位置を占める作品で、出品作内で最大級の絵画作品です。



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上の《ビルケナウ》には、1944年8月にアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所内で撮られた写真が埋め込まれているそうです。
これらの写真は「ゾンダーコマンド」と呼ばれるユダヤ人捕虜によって、内部告発の目的で隠し撮りされました。
ゾンダーコマンドが野外焼却溝に並べられた死体を焼く様子や、林の中をガス室に向かって歩いていく女性らの姿が映っています。

リヒターは、まず4枚の記録写真をカンバスに投影し、グレースケールで陰影を描き、あとから色を乗せていく技法で描き写しました。
さらにその上に、赤、緑、黒、白の絵の具の層を塗り重ね、もとの絵を完全に塗りつぶしました。
リヒターの他のアブストラクト・ペインティングと同様に、スキージを駆使して絵の具を押し広げ、削り取っています。



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《ビルケナウ》のクローズアップです。
さらに、絵の具を塗り終わったらそれで完成、ではありませんでした。

リヒターは4枚の油絵と同サイズのデジタルコピーを作製し、その4枚がオリジナルと向かい合い正対するように展示されていました。
この制作プロセスもまた、「ビルケナウ」の価値に含まれているのだとか。



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こちらもリヒターのアブストラクト・ペインティングです。



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リヒターのドローイングのひとつ。
リヒターのドローイングは、断片的な線や面を画面全体に配した、抽象作品です。



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オイル・オン・フォトと呼ばれるシリーズです。
1980年代後半から制作され始めた、写真に油絵具などを塗りつけたシリーズだそうです。
具象的な写真と抽象的な絵具が、お互いに混じり合うことなく、同一の平面上に並置されています。



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ゲルハルト・リヒター展、とても見ごたえがありました。
展覧会初日の開館と同時の入館だったにもかかわらず、お客さんはそれほど多くなかったですね。
3年前のクリムト展とは大違いです。

なお、年パスを持っていますので、来年1月末までやっているリヒター展は再訪・再再訪する予定です。
トヨビの常設展が変わるタイミングで見に行くと効率が良いかなあ。




愛知県豊田市 豊田市美術館にて
SONY α7c
Tamron 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)
Adobe Lightroom Classic



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Commented by voyagers-x at 2022-10-20 06:13
おはようございます ‼️
素晴らしいですね
すべて単純ではない所が良いですね
感覚的に大きな刺激を貰えそうですね
見ていて楽しく感じそう

Commented by j-garden-hirasato at 2022-10-20 07:14
これは、見応えがありますね。
写真撮影もOKですか。
撮り甲斐がありますね。
ゲルハルト・リヒターのことは、知りませんでしたが、
どの作品も、引き込まれます。
東ドイツから西ドイツに移住して、アート活動をされていたのですか。
当時、移住が簡単にできた時代でしょうか。
移住するにも、いろいろ苦労があったのかな。
Commented by houbow at 2022-10-20 07:54
こういうのを見ると

自分も何かやらなきゃぁ
とおもいますから不思議ですねぇ
Commented by getteng at 2022-10-20 09:46
blackfacesheep2さん
これはなかなか難しいゲイジュツですね。
老生の頭では理解に時間を要するかも。。。
Commented by blackfacesheep2 at 2022-10-20 11:46
voyagers-xさん、こんにちは。^^
トヨビにゲルハルト・リヒターが来ると知って、条件反射的に年パスを買っちゃいましたよ。(;・∀・)
ドイツ人気質というのかな、生真面目でストイック、硬質なアートですよね、官能に訴える部分はほぼないです。
Commented by blackfacesheep2 at 2022-10-20 11:48
j-garden-hirasato さん、こんにちは。^^
トヨビは基本的に写真撮影がOKなんですが、クリムト展の時は禁止区域が多かったです。
ゲルハルト・リヒターは西ドイツへの出国が可能だった1960年代初期に東ドイツを後にしたようですね。
Commented by photofloyd at 2022-10-20 11:48
おはようございます
ゲルハルト・リヒター展が豊田市でおこなわれているんですか
いいですねぇーー行きたいですねぇ
カラーチャート、フォトペインティング、グレイペインティング、アブストラクト・ペインティング・・・実物みたいです。
ビルケナウは強制収容された人による事実を記録のために隠し撮りされた写真を芸術の世界に・・私もポーランドで、そこに行きましたが・・貴重な負の遺産ですね
Commented by blackfacesheep2 at 2022-10-20 11:51
houbowさん、こんにちは。^^
おっしゃる通りですね、こういうのを見ると刺激されること半端ないです。
トヨビはうちから近くて面白い展示会をやるのでありがたいです。
Commented by blackfacesheep2 at 2022-10-20 11:53
getteng さん、こんにちは。^^
モダンアートは確かに理解しようとすると難しいのかも。
でも、見て面白いとか、心が動かされたとか、「感じれば良い」と理解しています。(;・∀・)
Commented by blackfacesheep2 at 2022-10-20 11:54
photofloydさん、こんにちは。^^
ゲルハルト・リヒター展、先日まで東京で行われていたものがトヨビに巡回してきたのですね。
以前にもアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所に行った件、お聞きしました・・・私も一度行ってみたい場所です。
Commented by iwamoto at 2022-10-20 12:32 x
やはり、現代最高のアーティストですね。
わたしのような、勝手な弟子が界中にいることでしょう。
何がアートか、何がフォトグラフか。
ここまで眼前に提示できるなんて・・・。
Commented by blackfacesheep2 at 2022-10-20 12:51
iwamoto 師匠、こんにちは。^^
そうですね、現存するアーティストの中でも、その存在感はぴか一ですね、芯の通ったアートです。
トヨビの学芸員さん、東京展が終わって間髪を置かずに豊田市で開催、なかなか見事なお仕事ぶりです。
Commented by floreta2 at 2022-10-20 14:13
わー 一枚目凄くインパクトありますね
向う側の人もこちらを撮られていますね
面白い‼
人を撮るって難しいです
ブレがまたいい仕事してますねー
Commented by blackfacesheep2 at 2022-10-20 16:27
フロちゃん、こんにちは。^^
展覧会でのスナップは、人物を典型として使うと臨場感が出るんですが、昨今は肖像権があるので難しいです。
そのため、アウトフォーカスにして暈かすか、低速シャッターでぶらすか、いずれかの処理を多用しますね。(;・∀・)
by blackfacesheep2 | 2022-10-20 05:00 | Art | Comments(14)