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Soul Eyes

黒顔羊のデジタルフォトギャラリー#2です。光蜥蜴(ヒカリトカゲ=光と影)や錆びたもの・滅びゆくものが大好きです。 自分の魂の目に感光したものは何でも撮ります。


by Black Face Sheep
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ポケットに入るアラコキな中判カメラ

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我家の花瓶に活けられたコスモスの下に、金属光沢を放つ物体が見えますが、これは何でしょう・・・



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そこには、ZEISS IKONの名前が刻まれた金属部品がありました。
ZEISS IKONと言えば、1926年にカール・ツァイス財団傘下で創設されたカメラメーカーです。



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そのZEISS IKONが作った中判カメラが、このカメラです。
実は初代フルスペクトルカメラのSONY α5000が、オークションで18,000円で売れたのです。

それを軍資金にして購入したビンテージカメラで、落札価格は16,800円とお値打ちで、お釣りでランチが食べられました。^^
いつものベアさんのサイズからお分かりになると思いますが、中判にしては小ぶりです。



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このカメラの名前は、ZEISS Super Ikonta 531と言います。
製造されたのは、1936年から1953年・・・第二次世界大戦をはさんで17年にわたって製造されたカメラです。
一番若く見積もっても私より三歳以上年上、今年68歳~85歳となる古いカメラです。



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ツァイス・イコンタはいわゆる「蛇腹カメラ」で、鏡胴部が蛇腹によって伸縮するレトロな構造です。
またこのイコンタ、膨大なバリエーションを持つカメラです。
どの機種も120フィルム(ブローニーフィルム)を使用するカメラですが、版型が異なります。

日本では、6×4.5cm判をセミイコンタ、6×6cm判をイコンタシックス、6×9cm判をイコンタと呼ぶようです。
欧州では6×4.5cm判をイコンタ5**、6×6cm判をイコンタ5**/16、6×9cm判をイコンタ5**/2と呼びます。
米国では6×4.5cm判をイコンタA、6×6cm判をイコンタB、6×9cm判をイコンタCと区別するようです。



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我が家にやってきたのはSuper Ikonta 531と、"Super"「超級」がついています。^^
なぜスーパーかと言うと、連動距離計がついているからです・・・無印イコンタは距離計が搭載されてない目測式です。

蛇腹カメラは伸縮量が微妙で、精度の高い連動距離計を開発するのは至難の技でした。
しかしツァイスは回転プリズムを使用したドレーカイル式連動距離計によって、蛇腹カメラでも高精度な距離計を実現しました。

上の写真、左下のベアさんの左手にある招き猫の手のようなレンズが、ドレーカイル回転プリズムです。
ここに映った映像がカメラ本体の窓に入り、右上のベアさんが覗いている測距ファインダーで二重像として見えると言う仕組みです。
レンズ左上のギアを回してやると、レンズのヘリコイドが回転し、二重像を合致させてピントを合わせます。



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この招き猫の手を180度回転させてレンズ内部に収納し、5枚目の写真の"ZEISS IKON"の刻印がある部分を下に押してやると・・・
おお、レンズユニットがボディ内部に沈胴するのです♪

精度の高いフォーカシングとコンパクトな筐体を両立させたツァイスの設計部門、凄いですね。
「ドイツの科学力は世界一ィ~」なんて叫びたくなる人がいるのも無理はありません♪



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通常のIkontaには、Zeiss製のTessarが搭載されるのがお約束になっています。
しかし、私が落札したIkontaには、Schneider-Kreuznach Xenar f:3.5 75mmが搭載されていました。

私、シュナイダーのレンズ、大好きなのですよ。
かつて使っていたRolleicord V型が、Schneider Kreuznach Xenar 75mm f/3.5を搭載していました。

同時期に使っていたRolleiflex Automat MXのOpton Tessar 3.5/75より、Xenarは柔らかく階調感に優れた描写をしました。^^
Opton Tessarはハイコンで図太いシャープさ、Xenarはローコンで線の細いシャープさ、どちらも個性的です。

Super Ikonta 531におけるSchneider-Kreuznach Xenar 3.5/75は、戦後生産モデルから搭載されました。
また1950年代中期からはレンズコーティングが一般的になりましたが、うちの子はノンコートレンズです。
こういった点から類推すると、うちのセミイコンタは1940年代後半から1950年代前半に製造された、アラ古希モデルのようです。



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シャッター速度はノスタルジックな大陸系列です・・・設定ダイヤルを動かして1/100秒にセットしてみました。
その下には絞ダイヤルがあり、こちらはF5.6に設定してみました。

シャッターダイヤルからシャッターコッキングレバーが生えており、この頃は手動でシャッターチャージするのが一般的でした。
このCompur-Rapidシャッター、アラコキなのに精度は無問題、露出ミスはありませんでした。
デッケル社のコンパ―シャッターは経年劣化が少なく、適正な露出諸元を設定してやれば無問題で使えます。



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キャリーハンドルの下にある金属プレートをスライドさせると、裏ブタが開けられます。
120フィルムを装填して、縦56mm、横42mmのいわゆる"6x4.5"サイズの写真が撮れます。

ちっちゃなカメラですが、35mm判(36mm x 24mm)の2.7倍の面積の高精細な写真が撮れます。
35mm判の2倍未満の面積しかないデジタル版ロクヨンゴ(44mm x 33mm)より、はるかに大きいです♪

ちなみにフィルムは右側に装填し、左側のスプールに巻き取っていきます。
Rollei 35と同じですね、一般のカメラとは逆なのは超小型設計の弊害でしょうか。



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イコンタ系のフィルムローディングは、古めかしい「赤窓」式です。
カメラの裏のノブをスライドすると、赤い窓が現れ、そこから120フィルムの裏紙に印刷されたコマナンバーを直に読み取ります。

上の写真は、Ilford Delta 100の裏紙です。
上から6x4.5用、6x6用、6x9用のコマナンバーが書かれています。

この方式は簡便で良いのですが、ここから漏光することが時々あります。
うちに来たSuper Ikonta 531、目立った漏光はありませんでしたが、この赤窓の視認性が悪く、番号を読み取るのに苦労しました。

試写の際に、1枚目を取り終わったあと、2枚目を出すために巻き上げるのですが、見えない・・・気がついたら3が出てました。(;・∀・)
それ以来、赤窓の数字を読むために、明るいところで読むように心がけました。



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左側の巻上ノブの右上に見えるのがシャッターボタンです。
シャッターボタンが左側にあるカメラ、"KMZ Moskva 5"以来、久しぶりに使いました。
モスクワ5型は、ソ連のKMZがツァイス・イコンタをコピーし独自進化させたカメラですから、共通点が多いのも納得です。

またイコンタシリーズには、「二重撮影防止装置」が装備されています。
フィルムを巻き上げていくと、巻上ダイヤルの右下に赤いボッチが登場し、フィルムがローディングされたことを示しています。
シャッターを切ると、この赤が消えます・・・その後、フィルムを巻かない限りシャッターが切れない構造になってます。

軍艦部の真ん中にある長方形の窓は、写真を構図するためのファインダーです。
その右上にあるボタンを押すと、レンズ部のロックが外れて展開できるようになり、同時にこの構図ファインダーが立ち上がります。
その仕掛けがまるでバネ仕掛けのようなので、スプリングカメラと呼ばれているのでしょうかね。



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これが構図ファインダーが立ち上がったところです。
縦長の3:4のアスペクト比になっており、素通しかと思いきや一応レンズが入った凝った造りになっていました。
Rollei 35のアバウトなファインダーと異なり、このSuper Ikonta 531のはタイトで、気を付けないと被写体がちょん切れます。

実はこの構図ファインダー、最初に手に入れたときには、上下左右対称になってませんでした。
鼻の先っぽがちょん切れたゾウさんが写ってしまったのは、構図ファインダーがずれてマウントされていたせいですね。(;・∀・)
でも時計用ドライバーで簡単に調整できましたよ、ビンテージカメラって融通が利きます。

また、この構図ファインダーは近距離になるとパララックスが大きくなり、狙った位置と写る位置がずれます。
特に横構図、つまりカメラを縦に構えて撮るとそのパララックスがより大きくなり、フレーミングに注意が必要です。
試写の際に、思っていたより前ボケが大きく写って慌てました・・・と言っても、かつて使っていたモスクワ5型よりはマシですが。



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なお、二重撮影防止の赤ボッチが動いてしまい、フィルムが巻いてあるにもかかわらず、シャッターがロックされる時があります。
さらに巻き上げれば再び赤ボッチが再び現れ、シャッターロックが解除されますが、未露出のまま一枚送られてしまうのでもったいないです。

こんな場合は、レンズに生えているレリーズレバーを直接押して、シャッターを切りましょう。
ベアさんが眺めているのがそのレリーズレバーです・・・それを遠隔操作する金属の受皿をシャッターボタンとして使います。
Ikontaの古いモデルではシャッターボタンの遠隔操作がなく、レリーズレバー直接押してシャッターを切っていたそうです。^^



さて、このSuper Ikonta 531で写真を撮る手順を要約すると、次のようになります。

1.フィルムを装填し、赤窓にコマナンバーが見えるようになるまで、左側のノブで矢印の方向に巻き上げる。

2.レンズ部展開ボタンを押し、レンズ部を引き出すとともに構図ファインダーを立ち上げる。

3.絞値とシャッター速度を設定する。(体感露出もしくは露出計使用)

4.シャッターをチャージする。

5.構図ファインダーでざっくり構図を確認した後、測距ファインダーで被写体の二重像を合致させ、ピントを合わせる。

6.構図ファインダーで写真の写る範囲を再度確認する。(パララックスを考慮すること)

7.シャッターボタンを押す。
(シャッターがロックされていたら、レンズから生えているレリーズレバーを直接操作)



いやはや、アラコキのビンテージカメラで写真を撮ると言うのはなかなかにメンドクサイです。
でも楽しいんですよねえ♪



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私が所有するもう一台の中判フィルムカメラRolleiflex 2.8Cも、Super Ikonta 531同様、シュナイダー製レンズ搭載カメラです。
Schneider-Kreuznach Xenotar 80mm/F2.8は、かつて日本のカメラ界に「クセノタール・ショック」を引き起こした銘玉ですね。
Rolleiflex 2.8Cは1140g、Super Ikonta 531は590gと、その重量差は2倍ほども違います。

Rolleiflexは6x6ですから120フィルムで12枚の写真が撮れますが、Super Ikonta 531は6x4.5ですから16枚撮れますね。
ちなみにIkontaにも6x6バージョンがありますが、重量は戦前モデルが1kg弱、戦後モデルで700g程度と少々重いです。



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沈胴レンズ搭載カメラ同士のサイズ比較です。
Rollei 35Sと比べたら、Super Ikonta 531も大きく見えますね。

でも、Rollei 35は35mmフルサイズカメラとしては最小サイズですから、当たり前なんです。
実際にはセミイコンタは、一般的な35mm判カメラのNikon F3より小さくて軽いです・・・これで中判とは驚きです。



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このカメラを私が所有する一番小さなカメラバッグ、Billingham Hadley Sに入れてみました。
ううむ、メインコンパートメントじゃなくて、サイドポケットに入っちゃいますね。
パンツのポケットだと少々嵩張りますが、ツイードジャケットやコートのポケットなら楽勝で入りそうです♪

このポケットに入るSuper Ikonta 531で撮った写真は、私のフィルム写真ブログ"Silver Oblivion"に置いてあります。
ナリは小さくても、アラ古希でも、シュナイダー・クロイツナッハ製レンズと中判の威力で、びしっとした写真が撮れて驚きました。
ご興味がありましたら、こちらの作例をご覧ください。^^




愛知県みよし市三好ヶ丘にて
SONY α7c
SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO Art
Adobe Lightroom Classic



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Commented by j-garden-hirasato at 2021-11-03 06:56
半世紀以上が経っても、まだ使えるんですか。
大事に使われてきたオールドカメラなのですね。
レンズのギザギザ、文字の刻み、
堪りませんね。
blackfacesheepさんの手元に来て、
さぞカメラくんも喜んでいることでしょう。
Commented by getteng at 2021-11-03 09:41
blackfacesheep2さん
老生と同じ年齢のカメラがまだ使えるのですか!
その点、人間の老生は全く使い物になりませんよ(´;ω;`)ウッ…
Commented by lapie-fr at 2021-11-03 12:31
昔のカメラって可愛くってチャーミング
でも、、、
使えそうにニャイ
紙焼き、ご自分でなさるのですか?

Commented by blackfacesheep2 at 2021-11-03 13:30
j-garden-hirasato さん、こんにちは。^^
昔の機械は頑丈ですねえ、自動車も修理可能でいまだに現役の個体が結構ありますもんね。
中途半端に古い電子部品がいっぱい入った自動露出のカメラは使い物になりませんが、機械式カメラはいまだに使えますね。
Commented by blackfacesheep2 at 2021-11-03 13:32
gettengさん、こんにちは。^^
このカメラは戦前・戦中・戦後と長い期間にわたって製造されましたが、うちに来たのは戦後モデルです。
状態から判断して、1948年~1953年の製造かなあ、って思ってますが、実際にはどうなのかわかりませんね。
Commented by blackfacesheep2 at 2021-11-03 13:38
らぴさん、こんにちは。^^
そうそう、昔のカメラは可愛いですよね、使うにはちょっとコツが必要ですが、そんなに難しくはないですよ。
現像は自分でしますが、紙焼きは暗室がないのでしません・・・ネガをスキャンしてPCに入れ、デジタルプリントしてます。^^
Commented by iwamoto at 2021-11-03 14:05 x
毎度、力の篭ったレポで感心させられます。
このカメラも、昔風に言えば、良いところに嫁に来た、ということですが、今は禁句かも。
この頑張りに、勇気づけられた人もたくさんいらっしゃるでしょう。
ささやかでも、ご褒美があると良いですね。
Commented by blackfacesheep2 at 2021-11-03 15:40
iwamoto 師匠、こんにちは。^^
こういう古いカメラについては、ほぼウェブ資産とするべく、なるべく詳細に調べて書くようにしてます。(;・∀・)
それにしても、昔のカメラってシンプルですが頑丈なんですね、いまだに使い物になるとは本当に感動します。^^
Commented by hoshigaoka at 2021-11-03 20:23 x
こんばんは!

おお、これはレトロな中判カメラを入手されたのですね!
蛇腹式レンズなどギミックに溢れていて扱いは難しそうですが
慣れてきて思い通りの写真が撮れると楽しいでしょうね♪
バッグのサイドポケットに入るコンパクトさも驚きですが
作品のお写真も素敵な写りです!
カメラ散歩に持ち出す機会も増えそうですね^^)
Commented by blackfacesheep2 at 2021-11-06 08:18
hoshigaoka さん、こんにちは。^^
なんせ戦前に設計されたカメラですからねえ、うちの子は戦後の製造ですが、すべてがクラシックです。(;・∀・)
でも、このサイズで中判と言うのは凄いですね、小型軽量は前期高齢者となった私にはありがたい存在です。^^
by blackfacesheep2 | 2021-11-03 05:00 | Hardware | Comments(10)