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桜が満開の豊田市の鞍ヶ池公園です。静態保存されている真っ赤な名鉄電車は真っ白だし、樹木も白っぽく輝いて、満開の桜と見分けにくくなっています。他の色も明らかに変・・・発狂色に染まったこの風景は、疑色に染めた赤外線写真です。
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この写真を撮ったカメラがコレ、SONY α5000です・・・ただし、純正ではなく改造されたα5000(改)です。このカメラはローパスおよび有害光線除去フィルターを撤去し、紫外線から赤外線まで全ての波長の光に感光するカメラになっています。
いわゆるフルスペクトル仕様に改造したカメラです。と言っても私が改造したわけでは無く、改造済みのカメラを某オークションで2諭吉弱で手に入れたものです。
さてレンズの前には、IR720と言う真っ黒なフィルターが装着されています・・・赤外線フィルターの一種です。これは720nm以上のごくわずかな可視光と、赤外線を通すフィルターです。
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こちらはIR720フィルターを装着して撮影したRAW写真を、そのままJPGに現像したものです。つまり何も加工を加えていない、素の状態のIR720装着写真です。このフィルター、真っ黒に見えますが実際には濃赤色のフィルターで、撮って出しは真っ赤に染まった写真が出てきます。
この真っ赤な写真に含まれる、わずかな可視光の色相を加工すると、一枚目のような発狂系写真が出来上がります。Photoshopのチャネルミキサーで色を入れ替え、LightroomでWBを調整し、さらにコントラストや明瞭度をいじります。
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こちらはモノクロームバージョンの赤外線写真です。いわゆる赤外線写真と言うと、この白黒のイメージが多いと思います。
空が真っ黒になり、樹木が真っ白になり、時間が止まったような不思議な感覚の写真です。ジョルジョ・デ・キリコの『形而上絵画』にも似た、非日常的で強烈な印象を残すモノクロームです。
このB&Wな赤外線写真、私のデジタルモノクローム写真&英作文練習ブログにたくさん置いてあります。疑似総天然色の赤外線写真より上品で、飽きも来にくいです。(;・∀・)
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IR720フィルターを外したところです。この状態で写真を撮ると、すべての波長の光を通すフルスペクトル写真になります。↓
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これがフルスペクトル写真の未加工RAWからそのまま現像したJPG写真です。頭のネジが数本飛んだ感じの不思議な発色です・・・紫外線から赤外線までまんべんなく感光しているからでしょうか。日常が非日常へと変わりつつある色・・・JAZZで言うと、Eric Dolphyのバスクラの音って感じです。(;・∀・)
IR720を装着して撮った写真と同じ条件で撮っています。ホワイトバランスはAuto WB、それによる色温度補正値は5000度、色かぶりは+10マゼンタ寄りですね。
2/3段マイナス補正、ISO100で、F8は同じなんですが、シャッター速度が違います。IR720で撮った時は、1/640なのに、何もフィルターを装着していないフルスペクトル写真は、1/2000です。IR720フィルターを装着すると、2段弱、減感するってことですね。
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せっかくのフルスペクトルカメラなので、他のフィルターも装着して撮影してみました。左側からIR720フィルター、青いMC-80Bフィルター、薄緑色のUV/IRフィルター、透明なプロテクト・フィルターです。
一番右側は、49mm径フィルターを40.5mmのフィルター径のレンズに装着するためのステップアップリングです。このE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSと言うレンズ、フィルター径が40.5mmなんですよ。
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薄緑色のUV/IRフィルターを装着して撮った写真です。
フィルター無しのフルスペクトルより、ちょっとメリハリというかコントラストが強くなっているように感じます。
このフィルター、紫外線と赤外線を除去するということになっているのですが、どの程度除去されているのでしょうか。撮影諸元は前の2つと同じ、でもシャッター速度だけが1/1250となっています。素のフルスペクトルに比べると、このフィルターは1段弱減感していますが、それが紫外線と赤外線除去分なのかな。
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こちらはMC-80Bと言う青いフィルターを装着して撮った写真です。このフィルターは、フィルム時代、デイライト・タイプのフィルムを使って電球光で撮影する際に使われたものですね。このフィルターを使わないと、真っ赤な写真になってしまいました・・・昔はタングステン・タイプのフィルムもありましたね。
フルスペクトル・カメラは赤っぽい色になるので、電球光補正用のMC-80Bを使うとどうなるか、やってみたのです。これも撮影諸元はいつもと同じ・・・これだけ青いフィルターなのに、AWBだとかなりマゼンタかぶりしてますね。(;・∀・)
ちなみに、白い紙を用意してマニュアルでホワイトバランスを設定すると、もう少しまともな発色になります。これは後日、また研究発表しようと思います。^^
さて、この青いフィルターMC-80Bを装着した際のシャッター速度は、1/500となりました。フィルター無装着のフルスペクトルの際の1/2000に比べると、ちょうど2段減感していることになりますね。
でも真っ黒に見えるIR720は1/640ですから、この青いフィルターはそれより暗いってことになるようです・・・不思議です。青いフィルターは、赤外線をブロックしているのかも。(;・∀・)
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最後に、同じ場所をSony α6500で普通に撮った写真です。赤外線写真だと真っ白な名鉄電車、こんなに赤いのですよ・・・桜も樹木と見分けがつきますね。フルスペクトルカメラに比べると、日常的で刺激のない発色です。(;・∀・)
撮影諸元は今までとほぼ同じです。ホワイトバランスはAWB、でも補正値は5100とちょっと高いですね、色かぶりは+10マゼンタよりで、今までと同じです。
露出は2/3アンダー露出で、ISO100、絞りF8、シャッター速度1/500です・・・ほぼ"Sunny 16"のルール通りですね。素のフルスペクトルカメラは、同条件でシャッター速度が1/2000でしたから、より感度が高いってことになります。
紫外線と赤外線を取り込むと2段明るくなるって理解で良いのでしょうか・・・暗所で使うとどうなるのでしょう、やはり2段感度が良くなるのでしょうか・・・ノクトビジョンみたいに。
またフィルムで赤外線写真を撮るときは、IR720フィルターと同じカットオフ波長をもつSC720フィルターを使っています。そのフィルターを装着した際には、公称感度ISO400のフィルムをISO25として写すと適正露出になります。
つまりフィルムの場合は4段減感、F8でシャッター速度1/1000が、1/60になってしまうのですよ。でもフィルムだと4段減感なのに、デジタルだとフルスペクトルに対して2段減感です。
さらに普通のカメラが1/500のとき、IR720を装着したフルスペクトルカメラは1/640・・・あんな真っ黒なフィルターを付けているのに、普通のカメラより感度が高くなってる・・・文系頭の私には理解不能です。フルスペクトルカメラ、今後の研究課題、たくさんありますねえ。^^
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フルスペクトルカメラで撮った4種類の写真、比較用にまとめてみました。どれ一つとして、まともな色には写っていません。でもそれで良いのです、このカメラはそのために存在するのですから♪
愛知県豊田市 鞍ヶ池公園にて
SONY α5000 Full Spectrum
SONY E PZ 16-50mm F3.5-5.6
SONY α6500
SONY E 18-135mm F3.5-5.6
Adobe Lightroom Classic
Adobe Photoshop 2020

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