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Soul Eyes

黒顔羊のデジタルフォトギャラリー#2です。光蜥蜴(ヒカリトカゲ=光と影)や錆びたもの・滅びゆくものが大好きです。 自分の魂の目に感光したものは何でも撮ります。


by Black Face Sheep

春のフルスペクトルカメラ実験室

春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_11442182.jpg
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桜が満開の豊田市の鞍ヶ池公園です。
静態保存されている真っ赤な名鉄電車は真っ白だし、樹木も白っぽく輝いて、満開の桜と見分けにくくなっています。
他の色も明らかに変・・・発狂色に染まったこの風景は、疑色に染めた赤外線写真です。



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_17072443.jpg
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この写真を撮ったカメラがコレ、SONY α5000です・・・ただし、純正ではなく改造されたα5000(改)です。
このカメラはローパスおよび有害光線除去フィルターを撤去し、紫外線から赤外線まで全ての波長の光に感光するカメラになっています。

いわゆるフルスペクトル仕様に改造したカメラです。
と言っても私が改造したわけでは無く、改造済みのカメラを某オークションで2諭吉弱で手に入れたものです。

さてレンズの前には、IR720と言う真っ黒なフィルターが装着されています・・・赤外線フィルターの一種です。
これは720nm以上のごくわずかな可視光と、赤外線を通すフィルターです。



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_11444388.jpg
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こちらはIR720フィルターを装着して撮影したRAW写真を、そのままJPGに現像したものです。
つまり何も加工を加えていない、素の状態のIR720装着写真です。
このフィルター、真っ黒に見えますが実際には濃赤色のフィルターで、撮って出しは真っ赤に染まった写真が出てきます。

この真っ赤な写真に含まれる、わずかな可視光の色相を加工すると、一枚目のような発狂系写真が出来上がります。
Photoshopのチャネルミキサーで色を入れ替え、LightroomでWBを調整し、さらにコントラストや明瞭度をいじります。



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_11443860.jpg
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こちらはモノクロームバージョンの赤外線写真です。
いわゆる赤外線写真と言うと、この白黒のイメージが多いと思います。

空が真っ黒になり、樹木が真っ白になり、時間が止まったような不思議な感覚の写真です。
ジョルジョ・デ・キリコの『形而上絵画』にも似た、非日常的で強烈な印象を残すモノクロームです。

このB&Wな赤外線写真、私のデジタルモノクローム写真&英作文練習ブログにたくさん置いてあります。
疑似総天然色の赤外線写真より上品で、飽きも来にくいです。(;・∀・)



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_17072775.jpg
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IR720フィルターを外したところです。
この状態で写真を撮ると、すべての波長の光を通すフルスペクトル写真になります。↓



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_11444810.jpg
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これがフルスペクトル写真の未加工RAWからそのまま現像したJPG写真です。
頭のネジが数本飛んだ感じの不思議な発色です・・・紫外線から赤外線までまんべんなく感光しているからでしょうか。
日常が非日常へと変わりつつある色・・・JAZZで言うと、Eric Dolphyのバスクラの音って感じです。(;・∀・)

IR720を装着して撮った写真と同じ条件で撮っています。
ホワイトバランスはAuto WB、それによる色温度補正値は5000度、色かぶりは+10マゼンタ寄りですね。

2/3段マイナス補正、ISO100で、F8は同じなんですが、シャッター速度が違います。
IR720で撮った時は、1/640なのに、何もフィルターを装着していないフルスペクトル写真は、1/2000です。
IR720フィルターを装着すると、2段弱、減感するってことですね。



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_17073054.jpg
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せっかくのフルスペクトルカメラなので、他のフィルターも装着して撮影してみました。
左側からIR720フィルター、青いMC-80Bフィルター、薄緑色のUV/IRフィルター、透明なプロテクト・フィルターです。

一番右側は、49mm径フィルターを40.5mmのフィルター径のレンズに装着するためのステップアップリングです。
このE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSと言うレンズ、フィルター径が40.5mmなんですよ。



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_11445259.jpg
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薄緑色のUV/IRフィルターを装着して撮った写真です。
フィルター無しのフルスペクトルより、ちょっとメリハリというかコントラストが強くなっているように感じます。

このフィルター、紫外線と赤外線を除去するということになっているのですが、どの程度除去されているのでしょうか。
撮影諸元は前の2つと同じ、でもシャッター速度だけが1/1250となっています。
素のフルスペクトルに比べると、このフィルターは1段弱減感していますが、それが紫外線と赤外線除去分なのかな。



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_11450008.jpg
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こちらはMC-80Bと言う青いフィルターを装着して撮った写真です。
このフィルターは、フィルム時代、デイライト・タイプのフィルムを使って電球光で撮影する際に使われたものですね。
このフィルターを使わないと、真っ赤な写真になってしまいました・・・昔はタングステン・タイプのフィルムもありましたね。

フルスペクトル・カメラは赤っぽい色になるので、電球光補正用のMC-80Bを使うとどうなるか、やってみたのです。
これも撮影諸元はいつもと同じ・・・これだけ青いフィルターなのに、AWBだとかなりマゼンタかぶりしてますね。(;・∀・)

ちなみに、白い紙を用意してマニュアルでホワイトバランスを設定すると、もう少しまともな発色になります。
これは後日、また研究発表しようと思います。^^

さて、この青いフィルターMC-80Bを装着した際のシャッター速度は、1/500となりました。
フィルター無装着のフルスペクトルの際の1/2000に比べると、ちょうど2段減感していることになりますね。

でも真っ黒に見えるIR720は1/640ですから、この青いフィルターはそれより暗いってことになるようです・・・不思議です。
青いフィルターは、赤外線をブロックしているのかも。(;・∀・)



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_11471060.jpg
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最後に、同じ場所をSony α6500で普通に撮った写真です。
赤外線写真だと真っ白な名鉄電車、こんなに赤いのですよ・・・桜も樹木と見分けがつきますね。
フルスペクトルカメラに比べると、日常的で刺激のない発色です。(;・∀・)

撮影諸元は今までとほぼ同じです。
ホワイトバランスはAWB、でも補正値は5100とちょっと高いですね、色かぶりは+10マゼンタよりで、今までと同じです。

露出は2/3アンダー露出で、ISO100、絞りF8、シャッター速度1/500です・・・ほぼ"Sunny 16"のルール通りですね。
素のフルスペクトルカメラは、同条件でシャッター速度が1/2000でしたから、より感度が高いってことになります。

紫外線と赤外線を取り込むと2段明るくなるって理解で良いのでしょうか・・・
暗所で使うとどうなるのでしょう、やはり2段感度が良くなるのでしょうか・・・ノクトビジョンみたいに。

またフィルムで赤外線写真を撮るときは、IR720フィルターと同じカットオフ波長をもつSC720フィルターを使っています。
そのフィルターを装着した際には、公称感度ISO400のフィルムをISO25として写すと適正露出になります。

つまりフィルムの場合は4段減感、F8でシャッター速度1/1000が、1/60になってしまうのですよ。
でもフィルムだと4段減感なのに、デジタルだとフルスペクトルに対して2段減感です。

さらに普通のカメラが1/500のとき、IR720を装着したフルスペクトルカメラは1/640・・・
あんな真っ黒なフィルターを付けているのに、普通のカメラより感度が高くなってる・・・文系頭の私には理解不能です。
フルスペクトルカメラ、今後の研究課題、たくさんありますねえ。^^



春のフルスペクトルカメラ実験室_d0353489_11472746.jpg
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フルスペクトルカメラで撮った4種類の写真、比較用にまとめてみました。
どれ一つとして、まともな色には写っていません。
でもそれで良いのです、このカメラはそのために存在するのですから♪




愛知県豊田市 鞍ヶ池公園にて
SONY α5000 Full Spectrum
SONY E PZ 16-50mm F3.5-5.6
SONY α6500
SONY E 18-135mm F3.5-5.6
Adobe Lightroom Classic
Adobe Photoshop 2020


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Commented by getteng at 2020-04-12 06:40
blackfacesheep2さん
老生にとっては不思議な世界です(◎_◎;)
Commented by j-garden-hirasato at 2020-04-12 08:23
やはり、安物の改造コンデジでは限界がありますね。
最近、それを感じて、
あまり撮らなっています。
一眼デジの改良もの、
欲しくなってきました。
Commented by jikomannte at 2020-04-12 09:40
最初の一枚のインパクトが、素晴らしいですね。
昭和初期に考えられた近未来的風景、のような感じがします。
Commented by gaku0107boo at 2020-04-12 09:41
こんにちわ!
これはすっごく参考になります。
・・・今、狙っている改造カメラがあるんですが、ワタクシのお財布にはチト厳しいので迷っております。(フィルターも買わなきゃあかんし・・・。)
うーん、ここは我慢のしどころかなぁ。(汗)
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 10:08
getteng さん、こんにちは。^^
いやいや、これは誰にとっても不思議世界です。
紫外線だけの世界もやってみたいんですが、まだやり方がよくわかりません。(-_-;)
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 10:10
j-garden-hirasatoさん、こんにちは。^^
赤外線写真だけなら、安価な改造コンデジでも楽しめますよね。
大伸ばしプリントを作るときに画素数が足らないので2000万画素のAPS-C機に手を出しましたが、これは遊べますねえ♪
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 10:12
純さん、こんにちは。^^
カラースワップした赤外線写真って、昔の着色したモノクローム写真に印象が似ていますよね。
純粋なモノクロームより非現実感がより強くなってるように感じます。
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 10:13
岳の父ちゃん、こんにちは。^^
改造コンデジだと1諭吉以下でも手に入りますが、改造一眼デジだともう少し予算が必要ですね。
フィルターはそんなに高くないし、MC-80Bあたりは中古カメラ屋に行けばよく置いてありますよ。
Commented by movin0 at 2020-04-12 10:25
現実世界とは思えない夢の中か、SF映画のようで面白い世界ですね(^^♪
黒顔羊さんのこういう実験、研究系の講義は大変好きです。
以前も「....は夢を見るのか?」だったかな面白かったです。
また黒顔羊教授の講義お待ちしていますので宜しくお願い致します(笑)
Commented by jyuujin at 2020-04-12 11:15
う~ん?面白そうですが北旅には無理そうですね
羊さんの書いてあること? 半分も理解できない
レベルの北旅ですから・・・・トホホ
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 11:17
movin0 さん、こんにちは。^^
紫外線から赤外線まで、すべての波長の光線が見られると、こんなことになっちゃうのですね。
わはは、私も好奇心が強いので、ついついこういう比較実験をやってしまいます・・・うちの三脚の主な用途はコレですね。(;・∀・)
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 11:18
北の旅人さん、こんにちは。^^
昔から、何か疑問が湧いてくると、速攻実験をやりたくなるタチなんですよ。
写真も銀塩からデジタルに変わり、こういう実験が簡単にできるようになったので、楽しいです♪
Commented by monochrome_2019 at 2020-04-12 11:23
なるほどー勉強になります(とか言ってほとんど分かってないw)。
しかし写真の世界もホント奥が深いなー!
Commented by photofloyd at 2020-04-12 11:28
なかなか研究熱心で非常に参考になりました。私は同様のFull Spectrumを使用していますが、IRの720,760,850,950の四枚で遊んで居るのみです。そうですね・・・もう少し違ったフィルターにアプローチしてまみす。
Commented by iwamoto at 2020-04-12 11:59 x
このような実験と考察が、プラチナブロガーのプラチナブロガーたる存在価値のひとつであると思います。

エリック・ドルフィーの例えも素晴らしいです。
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 13:51
monochrome_2019さん、こんにちは。^^
あはは、オタクっぽい実験なのでわかりにくくてすみません。
でも、こういう実験は誰もやっていないようなので、WEB資産になると思い、やり続けております。(;・∀・)
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 13:56
photofloydさん、こんにちは。^^
私もIR720以外にも、より可視光の入るIR680を使ってみたいと思っています。
次は白い紙を持っていってマニュアルでWBを合わせて実験してみようかと思っています。^^
Commented by blackfacesheep2 at 2020-04-12 13:58
iwamoto 師匠、こんにちは。^^
プラチナブロガーも千差万別で個性的ですよ、こういう好奇心丸出しな実験をやっている方は少ないと思います。
エリック・ドルフィー、伝統と前衛のはざまの微妙なところが味わい深いです。^^
by blackfacesheep2 | 2020-04-12 05:00 | Infra Red | Comments(18)