ポチリヌス菌が連れて来た絞羽根が15枚ある中望遠
2017年 12月 02日
晩秋の空を写すガラスの塊・・・カメラのレンズですね。
中を見ると何やらウズマキのようなものが見えますが、これが絞(しぼり)羽根です。
レンズの中に入ってくる光の量を調節する働きをし、この絞羽根の枚数やカタチによってボケの雰囲気はずいぶん変わります。
絞羽根の枚数が多いほど、また絞羽根のカタチがカーブを描くほど、絞った時のボケのカタチは美しくなると言われています。
一般的に絞羽根の枚数は、5枚~9枚のレンズが多いですね。
ちなみにこのレンズの絞り羽根は、15枚もあります・・・ボケの美しさを予感させます。^^
このレンズは、最近私のブログで活躍している中望遠レンズで、LZOS Jupiter-9 85mm F2.0と言います。
ソ連製のレンズですから、本来はキリル文字で”ЮПИТЕР-9"と書き、「ユピーチル・ヂェーヴィチ」と読むのでしょう。
うちに来たのは輸出仕様なので、”Jupiter-9"(ジュピター・ナイン)です。
ソ連製のレンズは、メーカーと言うのはなく、すべて親方カマトンカチ製です・・・
とは言え、作られた工場によって刻印が違います。
このレンズは先日ご紹介したハーフマクロ、"LZOS MC Volna-9 50mm F2.8"同様、LZOS工場製です。
LZOSとは、ロシア語のキリル文字"Лыткаринский Завод Оптического Стекла"をラテン文字表記した"Lytkarinskiy Zavod Opticheskogo Stekla"の頭文字で、リトカリノ光学ガラス工場という意味だそうです。
このレンズキャップに描かれているのが、リトカリノ光学ガラス工場のロゴです。
「三角形や丸形のガラスを生産している工場」と言う意味合いで、それらの形状を組み合わせ、中にキリル文字の「C」を入れた意匠です。
ちなみに、ソ連製の撮影機器のシリアルナンバーは、最初の二桁が西暦の下二桁となっています。
つまり、85xxxxと書いてあったら、1985年製造ってことです。
このJupiter-9は、1985年生まれ、今年で32歳です。
うちにやってきた個体は、ロシアのモスクワからやってきました。
eBayで見つけたとき、"Near Mint"(ほぼ新品)と言う記述に惹かれてしまい、ついポチリました・・・^^;
”Mint"と言っても、eBayではアテにはならないと言われています・・・でも使用感のないとても綺麗な個体がやってきました。
Jupiter-9 85mm f/ 2.0の歴史は、1948年にCarl ZeissのContax版Sonnarのコピーからスタートしたときに始まったそうです。
当時は使われていたガラスまでゾナーと同じだったようですが、1950年には光学系が最設計され、材料もソ連産のガラスに変更されて、KMZ (クラスノゴルスク機械工廠)で生産され始めました。
そして1958年には、KMZからLZOSに生産が移譲されたそうです。
Jupiter-9は15枚も絞羽根があるので、自動絞が使えません。
古めかしいプリセット絞の仕様になっています。
これはF5.6に合わせたところです・・・先端から一段目の筒がプリセット絞りの設定環になってます。
二段目の筒を回転させると、絞り開放F2.0から設定された絞値(この場合はF5.6)まで回せます。
絞値を再設定するときには、二段目の絞りを絞開放F2.0にしてから、一段目の筒を回して任意のF値に設定します。
撮影するときは、まず明るい絞開放でフォーカシングします。
フォーカスが決まったら、二段目の筒を設定した絞りまで回す、と言う仕掛けですね。
さて、これで手持ちの85mmのレンズが2本になりました。
Ai Nikkor 85mm F1.4Sと言う良いレンズがあるのに、なぜ一段暗いJupiter-9を手に入れたか・・・
それはボケに対するこだわりですね。
Ai Nikkor のレンズって、絞開放で使えばまあるいボケで気持ちが良いんですが、一段絞ると多角形が目立つボケになっちゃうんですよ。
大きさはご覧のように、かなり違います。
左のAi Nikkor 85mm F1.4Sは620g、真ん中のJupiter-9は360gと、倍近く重さが違います。
右のマイクロフォーサーズのLumix GM5に付いているLumix G 42.5mm/F1.7も、フルフレーム機の85mmと同画角の中望遠です。
重さはめっぽう軽く、Lumix GM5が211g、42.5mm/F1.7が130gですから、合計で341gしかありません。
例によって、比較撮影をしてみました。
やはり絞で一段違いますから、ボケの大きさの違いははっきりわかり、F1.4のAi Nikkorのボケの方がかなり大きいです。
じゃあ、Ai Nikkorを一段絞ってF2にしてみると、どうなるか・・・
当たり前のことながら、ボケの大きさもシャッター速度も、JUPITER-9と同じになりますね。
とは言え、ボケのカタチとか色味は若干違います。
JUPITER-9とマイクロフォーサーズの同画角のレンズ、42.5mm/F1.7を比較してみました。
このLumix G 42.5mm/F1.7をフルフレーム機に換算すると、85mm/F3.4ですから、ボケの大きさはずっと小さいですね。
とは言え、この小っちゃなレンズでも、フルフレーム機の標準ズームの望遠端よりはボケます。
例えば、ニコンのAF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR、望遠端の85mmのF値はF4.5ですからねえ。^^;
さて、今度は最短撮影距離(MFD, Minimum Focusing Distance)の違いを比較してみました。
JUPITER-9は80㎝、Ai Nikkor 85mm/F1.4Sは85cm・・・実際に撮影すると、この程度の違いがありました。
さて、同画角のマイクロフォーサーズのLumix G 42.5mm/F1.7との比較です。
マイクロフォーサーズのレンズは寄れるものが多いですが、このLumix G 42.5mm/F1.7のMFDは31cmです。
撮影倍率は0.4倍ですからほぼハーフマクロ、寄りたいときにはとても便利です。
こうしてみると、それぞれ85mm画角のレンズの使い分けができそうです。
戸外で被写体をボケの中に浮かび上がらせたいときは、有効径の一番大きなAi Nikkor 85mm F1.4Sを使う・・・
絞っても丸いボケが欲しいときや、小型軽量を優先するときはJUPITER-9を使う・・・
近接で撮りたいときや、室内だったらマイクロフォーサーズのLumix G 42.5mmを使う・・・
ま、こんな感じでしょうかね。
さて、JUPITER-9の実写例です。
こちらはコスモス・・・背景のボケ玉が、このJUPITER-9らしいハードエッジなボケになってます。
また、このJUPITER-9は、イルミネーション撮影にも向いています。
ボケ玉が真ん丸になるし、ボケの中もタマネギの皮みたいな同心円状の模様が出ません。
JUPITER-9の絞り開放は滲んだハロを伴います。
最近のレンズはコーティングが優秀ですから、こういう滲んだハロを伴った描写にはなりにくいです。
後ボケだけでなく、前ボケにもうるうるとした滲んだハロが出ます。
それゆえ、JUPITER-9の絞り開放の描写は、夢見心地な描写になります・・・きょうびのレンズには出せない味わいです。
このうるおいのある味わいに麻薬性があり、ついついJUPITER-9を使いたくなってしまうのです。^^
季節はいよいよクリスマス・シーズン・・・
このボケの美しいJupiter-9でクリスマス・イルミネーションを撮ってみたいものです。
どうせなら、星ボケ(今日の写真の5枚目^^;)が出る、Volna-9とのソ連コンビで撮りに行きたいものです♪
なお、このLZOS Jupiter-9 85mm F2.0で撮ったデジタル写真は、下記のタグをクリックするかこちらをクリックしてください。
また、フィルムで撮った写真はこちらにあります。
愛知県みよし市三好ヶ丘にて
SONY α7 II ILCE-7M2
LZOS MC Volna-9 50mm F2.8 (1~6、15枚目)
LZOS Jupiter-9 85mm F2.0 (12~14枚目)
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旧ソ連製といえば、軍事用に開発されたものが多いでしょうね。
我が国でも同じですが、ミノルタは航空写真を撮るために開発されたと聞きました。
だから、現在でもそのまま航測会社で使われていますね。
綺麗です〜!
このレンズでのクリスマスカラーの街のお写真、楽しみです。
私のLumixにも新しいレンズをお迎えしたいのですが、
なかなかポチリヌス菌に感染しないなぁ(笑)
撮るものによってレンズを使い分けるのがいいのでしょうね
でもいつもたくさんレンズを持ち歩くのも嫌なので
できればオールマイティーなレンズを一本だけにしたいのですけど
でもこのジュピターは柔らかいですね
癒されるレンズの一つですね
ビルなどをカチッととるときは、ツァイス系のキレのいいレンズがいいかな......
ジュピター9、ワタクシの欲しいレンズの一つであります。
ワタクシも85~105くらいの中望遠が大好きで、何本かありますが、ジュピターとはなかなか縁がなくって・・・。
ボケも素晴らしいですが、なんといっても繊細で美しい描写をしますね。
キレイなおねいさんを撮ってみたくなりますね。^^
そうそう、旧ソ連製の撮影機器は基本的に軍事用ですね、ライフルの照準器とかも作っている会社もあります。
だから、精度よりも信頼性・耐久性重視ですね・・・酷寒の大地で使うせいでしょうねえ。^^
同じ焦点距離、同じ絞値でも、びみょ~に描写が違うから面白い・・・こう思うようになると、ポチリヌス菌罹患です。^^;
マイクロフォーサーズ用のレンズ、14mmだとワイドすぎるので、20~25㎜が良いだろうねえ♪
このJupiter-9の玉ボケは美しいです・・・絞っても円形を保ってますから、ポートレートに最高じゃないでしょうか。^^
ヤフオクや国内の中古カメラ屋ではあまり見ないかもしれませんが、eBayではいっぱい出品されてますよ。
https://www.ebay.com/sch/i.html?_from=R40&_trksid=p2057872.m570.l1313.TR0.TRC0.H0.Xjupiter-9+85.TRS0&_nkw=jupiter-9+85&_sacat=0
オールマイティーなレンズを一本だけ・・・私もそうしたいんですが、現実的には難しいですね。
ビルなどを撮るときは、歪曲の少ないレンズが良いですね、大口径レンズは、歪曲が多いので苦しいですね。^^;
Jupiter-9って、日本国内ではあまり流通してないですもんね、私もeBayでポチリました。
はい、線の細い柔らかい描写をしますので、ポートレート適性は抜群ですねえ♪
15枚羽根の絞り、は凄いです。
高輝度の光芒が30本になりますから、これも試してみたいですね。
マニュアル時代のAi Nikkor85mm/F1.4も、定評あるレンズですものね。
あの時代のレンズは、なんというか「安らかな」描写なのですよね。
おお、確かに15枚絞りなら、30本の光条が出ますよね、一度試してみようかな・・・ただ、逆光には弱そうですけどね。
Ai Nikkorは大好きで、24mm、35mm、55mm、85mmと持っています・・・どれもいまだに良いお仕事ぶりです。